「終活ノートを準備しようかな」
と考えたことがおありでしょうか。
実は終活ノートを購入して実際に記入した人の数はごくわずかです。
だれでも加齢に伴い、知力は衰えてきます。考えをまとめたり将来のことをイメージして計画することが難しくなってきます。
そのため葬儀のことや財産の事などをどのようにアレンジしたらいいのかわかりません。
もちろんかなりのご高齢であっても、明晰な思考力を保っている方はたくさんおられます。
しかし夫の父親は終活をしようと思い立ったものの、結局は何もできずに認知症が始まってしまいました。
結局終活は何歳くらいで始めるとよいのでしょうか。
繰り返す遺産相続の話
モラハラ父が私たちに仕掛けてくる唯一の会話は
「お前たちは遺産はいくらぐらいほしいのか」
というものでした。
いくらと聞かれても、その値段を言えばくれるわけではありません。
いくら憎たらしいとはいえ、人が死んだあとに手に入るお金のことを考える事などできません。
顔を合わせるたびに同じことを尋ねてきます。本気なのか冗談なのか区別がつきません。
一円もいらないから同じことを言わないでほしいと言ってもむだです。
たまりかねてメールを送りました。
私たちはお義父さんのことを愛していること、遺産を狙っているかのような冗談は不愉快なのでやめてほしいこと、私たちの経済状態について
それそれは具体的に詳細に長文にしたためて書いて送りました。
しばらくはおとなしくなったのですが、また同じことを言ってきます。
今から思えばこの時点ですでに認知症が始まっていたのです。
それとは知らずに私はムキになって怒っていました。
それにしてもなぜ繰り返し遺産相続の話をするのでしょうか。
十年以上たってやっとわかりました。
遺産相続の話をすることで自分に注意を向けたかった
結局のところ、お金の話をすることで自分に注目してほしかったのかもしれません。
「俺が一番お金を持っている」
といつも言っていましたから。マウンティングしたかっただけなのです。
上位に立っていることを認知させたかった。
普通の会話が一切できないから、それしか話せない。
「俺の遺産をどう分配しようかなあ~」
と殿様気分で話しているときが一番幸せなのかもしれません。
お金があるとすべてを手に入れたような気分になるものです。
遺産は残された家族で法律に基づいて分配すればよいだけなのではないでしょうか。
それをなぜあらゆるパターンを考えるのかわかりません。
そんな父が本気で遺産相続のことを考えようと思ったのでしょう。
新聞広告をみて終活ノートを取り寄せたのです。
父は終活ノートを書くことができるか
これがうわさの終活ノートかと思い、パラパラとめくってみました。
細かい項目に分かれており、葬儀や相続のことなど記入すべきことがたくさんあります。
それから一年後か二年後に帰省したときに見たのですが、何も書いていません。
白紙。
そして現在に至っています。今ならなおのこと書けません。
認知症が少しずつ進行していたので最初はそのことの気が付きませんでした。でも今では誰がみても認知症だとはっきりわかります。
発言がおかしいからです。たとえば
「北京の日本大使館に最近仕事でいってきた」
「エジプトにもいったことがある」
絶対にないことを言います。
他にも
- お風呂が沸かせなくなった(スイッチをおすだけですが)
- 前は簡単は麺料理ができたのにできない
- 家の鍵を三つもなくした
- うちの夫と父の弟の情報が入れ替わっている
記憶があいまいで、思考力は低下しています。
こんな状態で終活ノートが欠けるはずはありません。絶対に無理。
終活ノートは頭がはっきりしているうちでないと書けません。

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忍び寄る老いという怪物
老化というものは本当に残酷です。
人が音を立てて崩れるかのように壊れていっているからです。
いくらモラハラ父であっても、その様はあまりにも酷。
大企業で企業戦士として第一線で働き、高度経済成長を支えた団塊の世代の一人がこうなるとはなんとも悲しい現実です。
「人の一生ってなんなんだろう」
と思わずにはいられません。
認知症が進んで、以前なら言わなかったことを言うと可愛く思ってきます。
最近入院したときのこと、自分で点滴を抜いたり病院内を探検したりしていました。
当然病院を追い出されてしまいます。家に帰ってからこう言いました。
「やっぱり家族のそばがいい」
終活ノートは書けるうちに書いておく
とはいえ父の退職後のライフスタイルは、認知症へのプロローグのようなものでした。
「認知症になりたければこういう生活をしよう!」というマニュアルがあればその通りの生活です。
ないけど。
毎日朝の7時から夜の12時までテレビを見ているだけです。テレビの内容だって、集中して見れば役に立つ情報や興味深いことはたくさんあります。でも、ほとんどぼーっとして見ているだけなので覚えていません。
今さら終活ノートやエンディングノートを書くことは絶対無理です。父の場合は遅くとも70代までに書いておくべきでした。
年齢と共に考えをまとめたり、計画したりすることが難しくなるからです。
終活ノートは早めに書かないと、書けなくなります。
具体的な年齢は人によって異なりますが、最低でも知力がはっきりしているうちに書いておくべきだ思いました。
こちらも参考に→終活セミナーに参加するのは何歳がいい?