ミッションインポジティブ 第7話 骨折したリカちゃん人形

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病院に入院するリカちゃん人形 小説

「あー腹減ったー。ウインナーソーセージサンドまだ残ってる?」

そう言って次郎さんが店に入ってきた。

「ありますよ。あと三つ」

「よかったー。これがおやつに最高なんだよね」

パート従業員の沢村さんはウインナーソーセージパンを袋に詰めながら次郎さんに

「今日は売れた?」ときいた。

「今日はあんまりだね。昨日はよかったけど。今はネットで何でも買えるしね」

次郎さんはわらび餅の移動販売をしている。助手席には時折飼い犬のパグ犬をのせている。

「えー!わらび餅もネットで買えるの?」

「買える」

「それはそうと三郎さん最近見ないけど元気?」

「ああ元気だよ。今ね芋の仕入れに行ってるよ」

「へーそうか」

次郎さんの弟の三郎さんは石焼き芋の販売をしている。以前はアサリを売っていた。兄弟そろって移動販売のプロである。移動中に流す音楽はオリジナル。

移動販売において音楽の役割は計り知れない。売り上げを大きく左右する。昔は運転しながら歌っていたらしいが、今は安全上の理由からあらかじめレコーディングしたものを流している。

石焼き芋にせよわらび餅にせよ、そんなもので一家を養えるのだろうかと誰もが気になる。

とはいえネット販売や店頭販売にはない魅力がある。

移動販売は去っていくからだ。

ネットや店頭では、いつでも買ってくださいといわんばかりに客が来るのを待っている。

しかし

移動販売は買えるタイミングが一瞬しかない。遠くから聞えてきたと思って、どうしようか迷っているうちに過ぎ去るのはよくある。

今しか買えない、という限定感からの焦燥感である。これを逃すと次いつめぐる会えるかわからない不安から買わざるを得なくなる。

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今日は沢村さんの娘てまりちゃんの元気がない。階段に座ってうなだれている。

chaakoは聞いた

「どうしたの?」

「手が取れた。」

てまりちゃんの手にはリカちゃん人形があった。右腕がとれていた。

Chaakoはリカちゃんを奪い二階へと駆け上った。

修理を試みた。

外れたリカちゃん人形の腕を押し込んでみた。肉球で。

入らない。二階の喫茶フロアにいるるみ子さんにやってもらっても入らない。

どの角度から差し込んでも入らない。

よく見ると腕の部分はかなり複雑になっている。猫の手ではどうにも治せそうにない。

そこでお店のテープでぐるぐる巻きにした。

「よしできた!」てまりちゃんの元に持って行った。

「わあーすごい。」

花が咲いたようにてまりちゃんの顔が明るくなった。

「今ギブスはめてるから。一週間は我慢だよ」

骨折してギブスをはめたリカちゃん人形

昔はリカちゃんの腕がとれたら差し込めばよかった。

今は腕部分の樹脂が割れてしまって取れるので、修理が必要になる。器用な人ならゴムパッキンなどを代用してできるだろう。

そうでないなら、修理センターに送るか新しいリカちゃんを買うしかない。

電化製品と同じだ。

昔は何でも繰り返し修理して使ってた。今は壊れたら買い替える。買い替えた方が安いという事になっている。

そうやって消費のサイクルができている。

消費は雇用を生み出す。

廃棄物も。

それが資本主義だ。

壊れたら新しいものを買えばいいのか。

リカちゃんには人権がなかった。

それでいいのか日本

さて、骨折ギブスをはめたリカちゃん人形。一週間の間にchaakoはリカちゃんの腕をどうにかしないといけない。その方法は二つ。

ゴムパッキン部分を、商店街の「畑中サイクル」のタケちゃんにお願いして修理してもらう。自転車やさんだからあるかもしれない。

あるいは移植。同じ型番のものを購入しはめるというもの。どちらかでリカちゃんの腕は完治する。

連載小説:ミッションインポジティブ 第8話 偽サイトにご注意


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