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ミッションインポジティブ 第10話 格安航空券で行く夢の国ハメハメカ王国

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猫が飛行機を操縦するイラスト

パルナス二階の喫茶コーナーでは、海外旅行から帰ってきたばかりの上岡さんを皆で囲んで盛り上がっていた。

商店街の人のほとんどが地元を離れたことがない。去年、タピオカ店の社員清川君が愛媛県松山市に行ったのが最も遠い旅行であった。

去年一年間清川君は、鼻高々に過ごしていた。会う人すべてに旅行の自慢話をしていた。

国内旅行に行っただけでもこのあたりでは大ニュースになるのだから、上岡さんが海外旅行にいったことは前代未聞のビックニュースである。

上岡さんが行ったのは太平洋に浮かぶ小さな国。ハメハメカ王国。今話題の格安航空券で行った。

「まあ、ハメハメカ王国はすごいよ。それはそれはキレイなところだった。

島の保護のために観光客を制限してるから、一年に五人しか来れないんだ。

ほんと俺はラッキーだったね。観光客が来るたび、国王自ら飛行場まで歓迎に来るんだよ!」

自慢気にハメハメカ国王とのツーショットを見せた。護衛も写ってる。

その写真を皆が欲しがった。

王様が観光客を出迎える

上岡さんは上機嫌で話を延々と続ける。

「あんなに小さな島なんだけどね、豪邸がいっぱい立ち並んでいるんだ。

現地の人もみなぽっちゃりしててね。痩せてる人は一人も見なかった。

島の中はバスが走ってて、大きいソーラーパネルが付いた電気自動車なんだ。それも無料なんだって」

「へー。タダでバスに乗れるっていいねー」皆がうらやましがった

「バスがタダで驚いちゃいけない。住居も、買い物もみんなタダなんだよ」

「えー!!!」人々はシンクロしてのけぞった。椅子から転げ落ちた者もいる。

ハメハメカ王国の主な資源はリン。

リンを国外に輸出することで国の財政を支えている。国民は税金を払う必要がない。

すべてのものが支給される。「じゃあ、働かなくていいの?」

「もちろん働くさ。国営の工場や学校、商店でね。よく働くらしいよ。」

南の島と聞くと人々はのんびりしてて、ちょっと働けばお昼寝してるイメージがある。

しかしハメハメカ王国では、昔から勤勉が美徳とされてきた。島民はわずかな給料であるにもかかわらずよく働く。

頑張っても、サボっても同じ給料であるのにサボる人はいない。給料がわずかでも、必需品はタダで手に入るから現金はほとんど使わないらしい。

「インターネットはできるの?」

「もちろん色々あるみたいだよ。

でもね。テレビもそうなんだけど。広告というものが一切ないんだ。

生活に必要なものはすべて支給されるから。それにね・・・・」

上岡さんの話は閉店間際まで続いていた。店長が売れ残ったパンをたくさん持ってきてくれた。

ビーチでくつろぐ現地の家族。幸せに暮らしている様子。

ネットではありとあらゆる情報を得ることができる。お湯の沸かし方から、うずらのオスとメスの見分け方、そして家の建て方まで。

なぜ情報が無料で得られるのか。

宣伝広告のおかげである。お湯の沸かし方のサイトに素敵なやかんの小さな広告を貼ることで、お湯の沸かし方を詳細に説明して執筆した人に広告料が入る。

確かに色鮮やかなやかんを見れば欲しくなる。

では、もしもハメハメカ王国のように一切の広告がないとしたら?

だれもお湯の沸かし方も、うずらのオスとメスの見分け方や家の建て方を教えないであろう。なんの得にもならないからだ。

そうなると人に尋ねるか図書館にいくしかない。それでもわからなければ自分で考えるしかない。

ネット社会は人に尋ねる、調査する、考えることがなくなる。

だから便利ということになっている。

さて、上岡さんはハメハメカ王国の酋長をイメージした土偶だった。話を聞いていた人は土偶をもらって大喜びだった。

ハメハメカ王国の面積は四国ほどの大きさ。セスナ機とLCCのみが発着する。LCCはあらゆる点でコストを削減しているため環境にもやさしい。だから国王もLCCの発着を認めた。

注意:ハメハメカ王国は地図には載っていません。

連載小説:ミッションインポジティブ 第9話 羽のない扇風機

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