ミッションインポジティブ 第9話 羽のない扇風機

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羽のない扇風機 小説

二階の喫茶スペースは、夕方になると西日が入ってとても暑くなる。

毎月の第三水曜に行われるスタッフミーティングで出た結論は扇風機の購入だった。

そこで、今日は店長自ら商店街の電気屋さんに扇風機を買いに行った。

「買ってきたよー。普通の扇風機でいいっていったんだけど、どうしてもこれがおすすめなんだって。最新式でさっき入荷したばかりらしいよ」

好奇心いっぱいのスタッフたちが扇風機の箱の周りに集まった。

今流行りの「羽のない扇風機」だ。羽のない扇風機といっても本当は羽がある。機械の中に羽がありそれを排出している。

見た目がスタイリッシュであり、手を入れる危険性もないことから発売以来人気の家電の一つだ。

ダンボールのガムテープをボールペンの先っちょで、がーっと切り込みを入れて開けた。「わぁーっ!!」という歓声と共に最新式の羽なし扇風機が威風堂々と登場。

初めて見る羽のない扇風機に驚きを隠せない。さっそくスマホでの撮影会が始まった。

「すごいねこの扇風機。風量が13段階もあるよ。うちのは強と弱しかないのに」

「それは少なすぎる。三段階以上はあるでしょ」

「見て,この扇風機有名人も使ってるって」

扇風機の入っていた箱には芥川賞受賞作家のレビューが載っている。そして日本編み物協会副会長のレビューも。

羽のない扇風機を使っている人のレビュー

日本の扇風機の風量は優れている。

多くの国の扇風機は羽が速く回るか、遅く回るかの違いでしかない。しかし日本の扇風機は、自然に近い風を出すとか赤ちゃん用の優しい風などこだわり満載である。

ランダムに羽を回すことで、流れてくるのは不定期な風である。このランダムさが心地よさを生む。窓から入ってカーテンを揺らす風は一つとして同じものはない。

中国の扇風機は風量に関して全くこだわりが見られない。しかも風量が強い。

日本の扇風機の「中」が、中国の扇風機の「弱」である。扇風機の強弱には国際水準がないのであろう。

さて店長が購入した扇風機は風量が13段階という前代未聞のものだ。その区分は強や弱といったもので表せるものではない。冷え性の沢村さんは扇風機にずっと当たると気分が悪くなると話し出した。

「でもこれだけ風量調整ができるんだったら、快適かもね。この一番左のボタンが弱い風なのかな・・」そう言って風量の表示を読み上げ始めた。

左から

微風

そよ風

清風

涼風

潮風

サザンウィンド

すきま風

木枯らし

おろまっぷ(北海道の日高山脈の南麓に吹く強風)

暴風

ハリケーン

台風

風来坊

「すごいねこんなにあって。自由に選べるね」最新式の扇風機を囲んでかなりの時間盛り上がった。

それから数日後・・・

扇風機本体が異常に熱くなることに気が付いた。もしかして不良品ではないかと皆が心配しだした。

そこでchaakoは店長に取り扱い説明書を見せてもらうようにお願いした。取扱説明書の最後にある「故障かな?と思ったら」のページを開いた。

するとそこには「本体が異常に熱くなる」と言う項目があった。対処方法を見ると「涼しいところに移動させ、うちわであおぐなどして本体を冷やしてください。」と書いてある。

結局皆で代わる代わるあおいで扇風機を冷やした。

連載小説:ミッションインポジティブ 第8話 偽サイトにご注意

「サンコー」では羽根のない扇風機は売っていませんが、おもしろ家電がもりだくさん。

たとえば

靴洗濯機

ヒータ付きベスト

全自動カップラーメン機

など見れば絶対ほしくなる!

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