パン屋「パルナス」がある鴨巣商店街では、加盟店で使用できるカードが人気だった。カードにあらかじめチャージさえしておけば、どの店でも買い物ができるという便利なものだった。
デポジットとして500円必要だ。
それは「QQカード」と呼ばれている。鴨の鳴き声からとられた名称である。
グレーヘアーの上品な女性が店に入ってきた。パンのトレーを取らずに、レジに向かって来る。
「QQカードの10万円なんてありますか?」
「え!QQカードの10万円分ですか?あぁ、はいはい。10万円分チャージされたQQカードでいいんですよね。少々お待ちください」
沢村さんはあわてて、QQカードの出し方を思い出していた。
chaakoは不審に思って尋ねた。
「おばあさん。QQカードは何につかうの?」
「それが、さっき息子から電話があって、会社で大きな失敗をしたらしく緊急に10万円のQQカードを買っといてほしいっていうの。
私もQQカードなんて買ったことないからね。そしたらパン屋さんに行けば買えるっていうから」
と話しているとおばあさんの携帯電話が鳴った。おばあさんの携帯電話にはキューピー人形がぶら下がっている。キューピー人形が来ている洋服はかぎ針で編まれてある。
「はいはい。清彦。今ねパン屋さんにいって聞いてるから。あるんだって、QQカードの10万円。はいはい。あ、そう。じゃあ家で待ってればいいのね。わかった。はいはい」
chaakoはすぐに今はやりのQQカード詐欺であることに気が付いた。
「おばあさん、ほんとに息子さんの声だったの?」
「うん。だって誰が他にかけてくるの?」
「たぶん、あと五分もすればかけてくるから、10万円のQQカードは何に使うか確認してみてくれる?」
おばあさんは不思議そうだった。
おばあさんは沢村さんと世間話をして待っていた。昨日の「三時のあなた」のことで盛り上がっている。
そこへ携帯電話の着信音がなった。
「おばあさん、息子さんにQQカードは何に使うか聞いてみて」
おばあさんはうなづいてから電話に出た。
「はいはい。あ、今ね買ってるから大丈夫だよ。それとさ、このカード一体何に使うの?
うん。うん。あーそうなの。わかった。」
そう言って電話を切った。
「あのね。息子が会社でミスをしたんだけど、そのために社員全員が残業するんだって。
たぶん徹夜でしないといけないから、社員全員にパンを配るように言われたらしい。
だからQQカードでパンを買うんだって。
あの子は昔からそういうところがあるのよ。はりきりすぎて、転んじゃうタイプなのよね。」
と目を細めた。
「おばあさん、それは息子さんじゃないですよ。QQカードはスマホからでもチャージできるし。それに10万円分のパンは店にもうないよ」
「そうなの?」
おばあさんは事態を呑み込めていなかった。
「最近QQカード詐欺が流行っているからね。今度電話かかって来たら、ペットの名前聞いてみて」
と、そこへ本当に電話がかかきた。
「はいはい。大丈夫だよ、買ったから。10万円分でしょ。
それはそうとね、あなた前にウサギをホームセンターで買ってきたでしょ。灰色の。
そうそう。名前覚えてる?」
しばしの沈黙があった
「ぴょん太?ぴょん太じゃないわよ。あなた本当に清彦なの?清彦だったら身長何センチか言ってみなさいよ!」
電話が切れた。
「息子じゃなかった」
おばあさんは唖然として放心状態だった。
「おばあさん、被害にあわなくてよかったよ。これからはこの作戦でいこう」
chaakoはおばあさんを慰めた。
高齢者を狙った詐欺は後を絶たない。
なぜ被害にあうのか。子供の声を聞き分けられないのはなぜか?
お年寄りは聴力が弱る。電話だとなおさら聞こえづらい。その上パニックになると本当に息子の声に聞こえるそうだ。
さらに加齢に伴い思考力、判断力は弱ってくる。変な電話がかかってきたら、相手にしないことが一番である。
相手を確かめたい場合はおばあさんのようにペットの名前や身長を聞こう。他にも
本当に息子かどうかを確かめるために
視力
部活
好きな球団
小6の時の担任の先生の名前
合唱コンクールで歌った歌
コレクションしているもの
好きなプリキュア
三国志の中で誰が好きか
キン肉マンの中で誰が好きか
などの質問を事前に準備しておこう
連載小説:ミッションインポジティブ第5話「チョコレートは愛の麻薬だった」
連載小説:ミッションインポジティブ 第7話 骨折したリカちゃん人形
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